楽しみにしていた写真展のオープニングパーティーに行ってきました。子育てに没頭する現在の私、オープニングパーティーなんてどのくらいぶりかしら、今回はチェコのフォトグラファーの中でも、個人的に大好きな作家さんですので、会場に入る前から心躍ります。会場はUMPRM(ウンプルム)チェコ工業美術大学併設の美術館です。
まずは、ウンプルム写真部門の部長、ヤン・ムルチョフ氏のご挨拶。たくさんの方々が来場していますが、全体的にちょっと年代高めです。今回の回顧展の作者フレッド・クラメル(1913−1994)はチェコで1930年代からコマーシャル・フォトグラファーとして活躍した人物。ちなみに、ユダヤ人として強制収容所に収容されつつ、1945年に収容所から解放された時は体重が40キロを切っていたと言う悲しい体験も、部長さんからお話がありました。
年代順に展示され一番古いモノクロの1930年代の広告写真から。レンズのボケの選択、照明の当て方、構図、全てが緻密に計算された心地よい一枚。さすがです。
ガラスは撮影モチーフの中で最難関と言われます。ガラスのグレーヴィングに最大のコントラストを作り出すこのライティング、私もたまにガラスを撮影するので(ガラス撮影は楽しい!)しばらくじーっと見入ってしまいました。
モノクロの後は彼の写真の真骨頂、カラーの広告写真の展示が始まります。社会主義時代、企業は全て国営で、クラメルは海外輸出に焦点を当てた国営企業の製品の広告写真を次々に撮影しました。社会主義時代の当時大きなアトリエを持っているということも、稀有だったということです。こちらはバーボフカでも主要商品となっているガラスのアクセサリーを世界中に輸出してきた国営企業ヤブロネクスの広告写真。私のよく知るスタイルやモチーフがちらほら登場します。ツェントロ・テックスという布専門の国営企業のポスターも・・・。ガラス製品や布製品はいずれもチェコを代表する輸出品でした。
「この写真はどこかで見たことある」という写真もたくさん展示されていました。見てください、この正しいレトロ感。1960年代のヤブロネクスの広告写真。
こちらはヤブロネクスがかつて顧客用に作ったカレンダー。イラストや写真の切り抜きをコラージュした、こちらのチェコスロヴァキア・レトロが炸裂するハイセンスな作品!
カレンダーにも使われているこちらの写真は、彼を知らずとも、チェコ人なら写真を見たことがあるという、イコニックな作品の一つです。
こちらもヤブロネクスの広告写真。鳥籠をそのまま帽子にしちゃえって、思いつきだったのか、緻密な計算なのか・・・うーん、それでも完成度の高い作品になっている・・・。さらに、帽子飾りにさりげなく、吹きガラスの飾り(太陽)まで盛っている・・・。
いずれにせよ、改めてチェコスロヴァキアのレベルの高さを思い知ります。
はい、問題です。これはどの企業の広告写真でしょうか。正解は造花!造花もチェコスロヴァキア時代、お隣のドイツなど輸出品目として生産されていました。当時から本物のような完成度の高い商品として定評がありました。
ご一緒したプラハのヴィンテージショップの店主で友人のイヴァナさんに恥ずかしながら私も一枚撮っていただきました。イヴァナさんは私より世代の高いファッションリーダーのお一人。1960-1970年代のファッションを自身のファッション黄金期を通して、写真の細かなバックグラウンドや歴史を説明してくださいました。
1970年代のストリート・ファッション写真。奥に写る杖をついたお婆さまがまた秀逸。先ほどのイヴァナさんによれば、「私たち(イヴァナさん当時ハイ・ティーンから20代前半)はこの頃もっと短いスカートか短パン、この膝上丈は20台後半から30代以降が着てたわね。」とのこと。当時は40歳でもこのくらい短いスカートを履いて皆さん街を闊歩されていたとか・・・。
ハイセンスな素晴らしい展示でお腹いっぱいになった後、帰路にはさらにこの景色!(ちなみにウンプルム美術館はプラハの春の音楽祭のメイン会場でもある芸術家の家ルドルフィヌムの目の前にあります。)家で主婦と母業に専念しすぎて、この景色をちょっと忘れかけていた私。季節も良くなってきたプラハをもっと楽しまなくちゃもったいないと改めて感じました。